英語ができなくてもオーストラリア人に“OK”を言わせた出川哲朗に学ぶ、必殺営業話法
「イッテQ」の出川哲朗は心理学のプロだ
このケース、何が悪かったかわかりますか?
伊藤さんが陥っていた罠を説明するには、人気TV番組「世界の果てまでイッテQ」の出川哲朗さんのあるシーンを見ていただければ簡単に説明できます。
これは、出川さんを含む芸能人たちがロケでオーストラリアに行った時のことです。課題はシドニーに住む人なら有名なある写真の名前を現地の方から聞き出すというもの。早く正解を聞き出せたほうが勝ちです。
出川さんと対決したのは英語ペラペラの若手女優。対決がスタートすると、彼女はベンチで休んでいる現地人に対し、丁寧に「Excuse me,Do you have time right now?(突然ですが、お時間今いただけますか?)」と尋ねました。
ところが、ほとんどの方は「No」と断ってしまったのです。流暢な英語をしゃべれる彼女に対し、失礼ながら出川さんの英語は中学一年生以下のレベルです。 しかし、事態は思わぬ展開を迎えます。
出川さんはいきなりカメラを向けながら「プリーズ!プリーズ!ディスピクチャーズネイム!」と写真を指差して要求を伝えてます。「Excuse me」という断りもいれず、いきなりストレートに聞きたいことをぶつけたのです。
すると、現地の方はすぐに出川さんに答えます。どうやら、これだけ唐突に、かつストレートに言われると、咄嗟に対応してしまうものなんですよね。 もちろん、イッテQの例はかなり極端なものですが、本題をいきなり伝えることで相手の興味を引くという点では英語も日本語も関係ありません。
この番組企画を見ると、出川さんほどの大胆さは必要ありませんが、若手女優が丁寧な英語を使えば使うほど、聞き手に考える時間を与えてしまい、断るスキを与えてしまったのは間違いないのです。 というわけで、伊藤さんは展示会で「ちょっとお時間よろしいでしょうか?」「私、◯◯という者なんですけど……」という細かな断りは最低限にして、本題を切り出せば結果が違ったのです。 しかし、いきなりクライアントに使うのは勇気がいります。まずは社内で試してみるのがおすすめです。お願いごとは急に提案すると断れないもの。たとえば以下の例を比較してみてください。
《ダメな例》
「後藤くん、ちょっと今時間ある?」
「なんでしょうか」
「明日までにお願いしてる資料作成の前に、急ぎで伝票を切ってほしんだよね」
「ちょっと時間取れるか微妙ですね……」
《テクニックを使った例》
「後藤くん、この伝票なんだけどさ、急ぎで明日までに切るのお願いしていい?」
「え、はい?」
「この伝票、急ぎで明日までにお願い」
「あ、はい」
もちろん、これは極端な例ですが、唐突な提案のほうが人はうなずきやすいのは間違いありません。ただし、やりすぎはくれぐれもご注意を。
なおこの作戦、好きな人や嫌われたくない人からのお願いだとこの作戦は効果的。予め自分との信頼関係ができている人に実践してみましょう。
この出川作戦、心理学でも使えるスキルとして知られています。
英語を必死に勉強して丁寧にすべてを説明した結果、相手が心を開かなくなってしまうのは本末転倒。大事なのは「商談を成立させる」「こちらに関心を持ってもらって立ち止まってもらう」といった最終目的を決して忘れないようにしてください。