<実録>上司に「死ね」と言われうつ病になったサラリーマンが、トップ営業になるまで

「営業マンが使える心理テクニック」を使って大失敗に終わった28歳営業マンの例

建築資材メーカー扶桑工業(仮名)の営業マン田代康介(28歳)。

入社5年目で研修の1年を経て営業部に配属。就業後はビジネス書を読み漁る努力家です。特に田代さんが好むのが心理学や英語などの書籍。

『営業マンに使える心理テクニック』などのタイトルの本を書店で見かければ、迷わず即買い。そんな彼が最近特にハマっていたのがメンタリズムでした。

今日13時からのアポは茅場町にある建設会社スパーク建設。資本金40億円、関東エリアを中心に展開する同社は、オフィスビルを中心に大型案件も少なくなく、自社の資材供給の契約をもらえば、かなりの大きな取引なります。

研修後、営業部に配属されて5年。そろそろ大きな受注がほしいところです。

電話の営業から、アポに至った今回の案件、話を聞くのは先方の営業部長山田氏。

名刺交換から始まり、パンフレットを開きながら簡単に自社サービスの紹介をします。 「で、弊社の商品なのですが、中小のビルの場合、納品が最短で3ヶ月程度で済ませることができます」 「なるほど。でこのページについてなんだけど……」

出だしは好調のよう。

ここで田代さんはクライアントの山田氏の動きを見て、心理学の本に書いてあったあるテクニックを使い始めました。
それは、“ミラーリング”です。

ミラーリングとは、言葉通り相手の行動を鏡に写っているかのように模倣する動きのこと。それによって相手に共感を示したり、相手に親近感を持たせる効果があるのです。

田代「では、改めて資料のほうを見ていただきたいのですが……」
山田「ええ、このページね。あ、違った次のページか。ゴホンッ(咳をする)」
田代「はい、こちらのページです。ゴホン(咳をする)」
山田「どれがウチで導入できる製品なの?」
田代「こちらのラインナップの中でも値段が中間のものになります」
山田「ああ、これか」(クライアントの山田氏、水を飲む)
田代「はい、こちらなら導入まで3~4ヶ月ほど待っていただければ」(田代も水を飲む)
山田「3ヶ月か……それだと今からギリギリかな」
……

30分ほどの商談を終え、茅場町駅のホームに立つ田代さん。今日の商談はうまくいった、と確信したのは、ミラーリングがうまく実践できたから。
山田氏はこれまで、つい商談に一生懸命になり、心理学のテクニックを駆使するのを忘れることが多かったのです。  しかし、今回は違う。  山田氏が資料をめくるタイミングでちゃんと資料をめくったし、お茶を飲むタイミングも一緒。頭をかいたときにはちゃんとこちらも頭をかいた。咳まで一緒に。必死に観察した賜物です。  ところが、商談から3日ほどメールも電話の連絡もなし。いったい、なぜ……?  そこで思い切って先方の電話をしたところ、思わぬ回答が返ってきました。 山田「もう御社と取引するつもりはないです。田代さん、仕事の仕方考え直したほうがいいよ」 田代「はい?どういうことですか?」 山田「君は何かおかしな行動したことに気づいてないのか?」 田代「はて、何のことですか?」 山田「僕のことを馬鹿にしてないかい?なんで僕が咳をすると咳をしたの?あれはおかしいでしょ」 田代「いえ、そんなことは……!」  ここで田代さんは初めて自分の失態に気づいたのです。 (もしかして、あのミラーリングがマズかったのか……?)  せっかく実践したミラーリングとが、なぜ商談に結びつかなかったのか。ここには心理学の本に散々書かれているミラーリングというテクニックが持つ一つの罠が隠されていたのです(次回に続く)。

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